10年後、日本のスキー場がほとんど潰れている未来

カナダ帰りのお兄さんがこんな記事を書いていて興味深かった。
 
 
 
要約すると日本のスキー場は禁止ばっかりだし子供向けにも設備投資してないし、レストランまずいしPR下手だしリフトおせーしホントクソ、っていう記事でこういう文脈最近よく見るけど、スキー場の経営目線で見ると割に合わないアドバイスも多い。リフトのレーンにニコニコしたスタッフ一人付けても客増えねーよ!20年前はリフト1時間待ちでも人来てたっつーの。ってね。
 
まず、スキー、ボートは本当にお金がかかる。これは元来お金持ちのスポーツなんだ。それを日本では一億総中流時代に中流の人が行ける料金と設備でスキー場を乱立させたわけだ。中流の人たちも少し背伸びしてスキー場に押しかけた。これが私をスキーに連れて行ってから始まる1980年代からのスキーブームだ。
 
・世界のスキーリゾートは誰のために作られているのか
ブログの彼のホームゲレンデはウィスラーだが、そこはベイルと並ぶ北米の金持ちが行くスキー場で、1日券が当日売りで200ドルだ。そこと1泊5000円で泊まれる寂れた温泉旅館が集まる1日券4500円の蔵王温(自粛)を設備とかレストランの質で比べるってのは酷な話だ。
 
当然ベイルリゾートがあるコロラド集には地元のあんちゃんが行くようなスキー場があって、例えばエーベーソンっていうスキー場はレストランに持ち込み自由でポテトだけ頼んでもってきた食パンとコーラを食べながらスキー場に2本しかないリフトで安くスキー場を楽しんでる。斜度45度を越す崖みたいなコースがあって、転ぶと滑落するんだけどあんちゃんたちが盛り上げてくれるから結構面白い。
 
要は、日本のスキー場は中流をメインのターゲットにしてきたが、その中流の人たちがずるずると下流に下がっていってスキー場に来れなくなって、かわりにオーストラリアとかアジアの人が来るようになったけどその人たちはどちらかというと国では上流の人たちだから、設備とサービスのミスマッチが起こっているわけだ。上流の外国人にはしょぼい設備で 、下流の日本人には高い値段設定。
 
ただスキー場経営の難しいところはある程度ボリュームがないと施設を維持できないので、いきなり日本の下流に成り下がりそうな中流をバッサリ切って外国からの上流階級をメインにするということに踏ん切りがつかない、もしくはそもそも経営が苦しくて融資も下りないから設備更新ができない。というのが本音だろう。更新が遅れれば遅れるほど手遅れになるので、これはもう各スキー場が生き残れるかは経営者の決断力にかかっている。
 
・日本人の遊びの基準
日本人は遊び方があんまり上手じゃない。この「遊ぶ」っているのは文化だし、豊かな国の人ほど遊び方が上手で、金に余裕があるおっさんがバイク乗ったりドローン飛ばしたりして楽しんでいるのも余裕の賜物だ。そしてその余裕って、金銭的なものだけでなくて精神的な将来の見通しだったりもするんじゃないかな?
 
 今日より明日が良くなるって漠然と思っている人は遊びに行くモチベーションも上がるし、多少趣味に金を使っても給料が増えるから今を楽しもうと考えるわけで、20年前のユーミンが流れてたスキー場に行った若者たちにとっては、その体験そのものがステータスだったはずだ。
今はオンボロのスキー場に行くことはステータスでもなんでもなく、1泊2日でスキーに諸々5万円かけるなら横文字の高級ホテルにとまって食事してナイトプールに入っちゃったりした方がインスタ映えもするしステータスにもなる。
 
 
だから、スキー場経営を考えるときには、メインのターゲットはどこにするのか。そのターゲットとなる客を呼ぶにはどんなマーケティングをしてどんな設備が必要なのか。これを頭から火が吹くほど経営者が考えて、そして早めに決断すること。一回投資したら10年は後戻りできないから。
 
僕の地元にある町民スキー場なんかは、設備更新は一切しないがリフト代を子供500円にして地元の子供たちのためにやっている。大人もたった1000円。こういう方針で、これはこれで大有りだと思う。
 
中途半端なスキー場はそのうち立ち行かなくなる。規模の問題ではなくそのスキー場が世間でどう認知されるかによる。1つでもスキー場がなくならないように、スキー場同士の競争が活発になって日本の遊びの文化の一つにスキー、ボードが残るように、苦思いでしょうがスキー場経営者のみなさんよろしくお願いします。